I,B,W

I,B,W

1. 泳ぐ人のバラード 2. I.B.W -It's a beautifui world- 3. 45歳の地図 4. 満月電車 5. 完敗
6. シンデレラちからいっぱい憂さ晴らしの歌今夜はパーティー 7. 女なんかなんだ 8. KASHIWA マイ・ラヴ
9. リゾ・ラバ -Resort Lovers- 10. それから 11. 大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い
お気に入り度:98点







今から20年以上前の1989年にリリースされた、爆風スランプのアルバム。


なぜか今まであまりこのブログでは取り上げてこなかったわけですが、爆風スランプは、
私にとって今までのリスナー人生の中で、歴代で5本の指に入るぐらい大好きなアーティストです。
どの作品にも、時代を超えた素晴らしさ、魅力があります。というかむしろ、
今の時代にこんなバンドはいないです。今後ともこんなバンドは現れないんじゃないかと思います。



今作のアルバムで、まず驚かされたのが、アルバムタイトル曲の
「I.B.W -It's a beautifui world-」。ズシっとしたロックサウンドに乗せて、
一部の人間たちにとって都合がいい、思い通りの「美しい世界」を作ろうとするがために、
環境破壊や、戦争を繰り返す、そんな人類への批判が込められた曲です。
そして、その次の曲「45歳の地図」では、
軽快なバンドサウンドに乗せて、中年サラリーマンの悲哀を歌った曲。
曲の間に挟まれるセリフの絶叫は、まさに中年男の魂の叫びって感じで、
コミカルな歌詞で笑えるんだけど、それでいてどこか切なさもあり・・・


このように、彼らはその時代ごとに、社会風刺的な曲を作り続けていました。
しかもそれでいて、同じ風刺的な曲でも、時にはシリアスに描き、時にはコミカルに描く。
後者の方は、一見ふざけた曲に聴こえるかもしれませんが、決してただふざけてるだけではない。
これぞ、ロック魂だと思います。こういう曲の数々をたくさん作ってきたバンドはそうめったにいないです。


もちろん彼らの魅力はそれだけではないです。
今作においても、歌詞のテーマや曲調は、びっくりするぐらい多種多彩です。
正統派歌謡曲の「KASHIWA マイ・ラヴ」のような曲もあれば、ブラスバンドを取り入れた痛快なファンク調の
「シンデレラちからいっぱい憂さ晴らしの歌今夜はパーティー」や、
「女なんかなんだ」(こんなタイトル、今の時代では考えられないですね) のような曲もあり、
そしてバラード曲も、彼らの代表曲でもある傑作バラード「大きな玉ねぎの下で」をはじめとして、
どれも素晴らしい曲ばかりです。
しかもそれでいて、これだけ多種多彩でありながら、この作品には不思議と統一感を感じます。
そもそも彼らのアルバム作品は、アルバム全体の統一感というものが全く無いような作品が多いのですが、
この作品は、この地球上の美しい世界の、様々な人間模様を描いた曲の数々という、
そんなコンセプトのもとに作られたかのような統一感を感じました。


また、これらどんなテーマの曲であっても共通しているのは、メロディの良さももちろんですが、
それよりも何よりも、サンプラザ中野さんの描く歌詞の質の高さは、日本トップクラスといっていいです。
鋭い社会風刺的な曲から、6曲目のようなギャグ満載の曲、この相反するかのようなテーマの歌詞を同時に作り続け、
さらには5、7、9、11曲目のような青春ソングやラブソング、さらにはバラード曲においても、
情景描写が本当にうまい、思わず曲のワンシーンが頭に浮かぶような曲ばかりで、
「大きな玉ねぎの下で」の歌詞の「九段下」「千鳥ヶ渕」などは、どんなとこなのか知らないのに
それでも曲の風景がなんとなく伝わってくる、そして行ってみたくなるぐらいでしたし、
このように、こんなにもありとあらゆるテーマの歌詞を網羅していて、そのどれもが質が高い、
こんなアーティストは他にいるのだろうか・・・
なぜもっと日本の音楽シーン、ロックバンドシーンの歴史の中で評価されないのか不思議です。


ちなみに、そんな素晴らしい曲の数々を作り続けていた、サンプラザ中野さんの最近の活動としては、
この前「アメトーク」という番組にてゲスト出演し、そこで「ポテトサラダの歌」という曲を、
なんとあの歴史的名曲「Runner」の替え歌バージョンで歌っていたらしく、この話を聞いたときは、
あ〜、こんなことしてるから評価されないんだと思いました(爆)
しかし、これもまた彼らの良さの一つなんでしょうけどね。一流ぶらない、大御所気取りしないようなところが。
作詞能力などは超一流なのに、それでもどこかふざけてるようにしか見えないところが・・・