今日は、新作アルバムのレビューをしたいと思います。



本当にやるせない気持ちを抑えながら・・・
今までいろんな歌手の作品を聴いてきましたが、ここまで本気で悲しい気持ちになったことはあっただろうか。
それぐらい、おそらく今まで一番ショックな作品だったですから・・・



(注意)
先に言っておきましょう。今回、お気に入り度の点数がこのブログ史上最低点となってます。
まさか、今年最初の方に出た20点という点数の下限が、わずか2ヶ月で塗りかえられてしまうなんて思わなかったです。
ということで、今回はそれぐらい、とんでもなく厳しい内容のレビューになってます。
こんな作品には出会いたくなかったし、こんなレビューを書く機会なんて無い方が良かった。
でも、これは書かなければいけないと思ったので、書きたいと思います。










STEP

STEP

1. GIVE ME UP 2. Friends! 3. さよならしてあげる 4. 嘘 5. キミノナミダ 6. 願い星 7. ゼロの空 
8. もしも願いが・・・ 9. 思い出になるの? 10. Happy Forever 11. in my life 12. 東京
お気に入り度:15点






玉置成実さんの5thアルバム。レコード会社移籍後初のアルバムでございます。
前作、前々作のアルバムは素晴らしい作品でした。
エレクトロ、ユーロビートなどの電子音楽をベースとしながらも、曲全体から感じる力強さと疾走感。
曲によってはロックテイストなどの要素も入った、重厚なアレンジの数々。
(4thアルバムではマーティ・フリードマンさんとコラボしたこともあるぐらいですからね)
そしてこれらの曲を歌う玉置さんの歌唱も元気いっぱいで、なんだか聴いてるこちらまで元気をもらえる、
そんな力強い曲ばかりでした。完全に独自の魅力、世界観というのを確立した2作品だったと思います。
そして、ライブではダンスパフォーマンスも素晴らしいという評判も聞いたので、
ぜひ今度はライブの方にも行ってみたいと思うようになったのです。



しかし・・・



その後レコード会社をユニバーサルミュージックに移籍してからは、いつの間にか、
最近流行の着うたR&Bみたいな曲ばかりを歌わされるようになってしまい、
あげくの果てに最新シングルでは、アーティスト名までもが「nami」という名前になり、
そして曲の方は西野カナさんなどを手がけるプロデューサーの曲である、
いかにもスイーツなR&Bを歌うことになる始末。
もう本当に「nami」とかこの時点でどういうことだと・・・
同じくユニバーサルミュージックに移籍した安良城紅さんが「BENI」と改名して、
そして着うたR&Bを歌うようになってからある程度売れたから、それの2番煎じなのか?
BENIさんは改名前でも割とR&Bっぽい曲を歌ってたからまだしも、
なぜ玉置さんにまでそういうことをさせるんだと・・・




そして今回聴いた5thアルバムは、一言で言うと、


「これまで築き上げてきた、独自の魅力、世界観というものが木っ端微塵に砕け散った作品」


としか思えませんでした。


アルバム全編通して、かつての魅力、面影というものが全くといっていいほど無い、
薄味なアレンジと、あっさりした歌唱。
曲調は、着うたで売り出されてそうなスイーツ向けR&Bやバラードばかりで、
バックの音も、いかにも着うた用とでもいうべき、ピアノの音と軽い電子音ばかり。
これ絶対エレキギターとかベースとか使ってないだろと思ってクレジットを見たら、
やっぱりこれらの楽器を使ってるのは10曲目だけ。
その10曲目ですらギターの音なんてのは全然前に出てきていない。
数少ない、ノリの良いダンスナンバーである1.6曲目ですら、音の作りが今までと比べると軽いです。
おまけに歌唱の方も、いかにもR&B仕様の歌唱という感じで、
どこか大人ぶった感じで歌っていて、元気さというものが感じられません。
1曲目の「GIVE ME UP」ですら個人的には、以前なら、豪快に鳴り響くシンセの音をバックに
もっと元気いっぱいに、「GIVE ME UP!!」って力強く歌ってただろと思ってしまいます。
歌詞の方も、まぁ前作前々作も割とベタな、前向き系の歌詞が多かったのは確かですが、
今作ではそれともまた違う、2曲目以外は全部ラブソングでしかも後半にいけばいくほど
見るからに着うたなスイーツ女子高生向けの、ありきたりでベタベタな恋愛の歌詞。
「メモリー」とか「履歴」とか「桜舞う」とかそんなフレーズばかりが目立つという・・・



元々彼女は、声質に特徴があるタイプでは無い、しかしそれでも
音楽に関しては、一番上の方で説明した通りの、独自のものを作り上げてきました。
それなのに、こんな内容の曲ばかり歌わされたら、個性なんて出るわけがないです。
もし、今作の曲の数々を誰が歌ってるかを知らないで聴いたら、
本当に誰が歌っているのか全然分からなかったでしょう。



それでいて、今回のアルバムタイトルは「STEP」。
これが「STEP」のつもりだったのか・・・
彼女は10代半ばでデビューして、今は21歳、
もう成人になったから、大人っぽい歌唱でR&Bを歌うことになったのでしょうか・・・
大人っぽい路線に挑戦するとしても、今まで築き上げてきたものを残しつつ、
新たな路線を開拓するというのならまだ分かるんですが、
こんな、まるで今まで積み上げてきたものを全て崩してしまうかのような路線変更をするのが「STEP」なのか・・・
そもそも玉置さんははまだ21歳、まだまだ全然若いんですよ。
というかそれ以前に、そもそも大人になったら、元気いっぱいにエレクトロ、ユーロビート系の曲を歌うようなことをしてはいけないのでしょうか。
(そういう風潮にさせたのはもしかして安室奈美恵さんの影響なのか!?)
そんなことはないでしょう。最近の歌手でも、ガルネクの千紗さん24歳で元気いっぱいにこれらの系統の曲を歌ってますし、
水樹奈々さんは30歳になっても「Gimmick Game」のような曲を歌ってたりするんですよ。
それでいいと思うんですけどね。


しかも、大人っぽいとはいっても、歌詞はいかにも女子中高生向けの内容ってところが
これまた思いっきり矛盾してるとしか思えないですし。



結局のところは、レコード会社からそういう作品にさせられてしまったのでしょう。
ライブでは、ダンスパフォーマンスも売りにしていたはずなのに、
今作ではダンスナンバーが少なく、バラードばかり歌わされてるところを見ても、
いわゆる女子中高生に媚びて着うた発でヒットさせたいというレコード会社の意図が一目瞭然でしょう。



で、それで売れるかといったら、逆にレコード会社移籍前と比べても大幅にCD売り上げが落ちてしまってるというから、
もはや完全に本末転倒でしょう。そりゃ先行シングル曲の時点でこんな曲ばかり歌ってたら
今までついてたファンは離れるのも当然ですよ。



レコード会社の人たちは、ダンスナンバーを歌いつつももR&Bも歌うという歌手を作りたいというなら、
既にこれでもかとばかりにたくさんいる、新人着うた歌手の誰かをそういう歌手に育てればいいのに。
今までそういう音楽をやってない、独自の世界観というのを作っていた歌手を、
そっちの世界に巻き込んで、それまで作り上げてきたものを壊してまでこういうことをやるのが、
いいことだと本気で思っているのだろうか・・・
今思えば、甲斐名都さんの2ndアルバムはまだ全然良い作品だった。良さが十分残ってたと思います。
それに対してこの作品には、今までの良さは何も残ってなかった。



今回新たに彼女が所属することになったユニバーサルミュージックというレコード会社は、
確か、社長が自ら、着うたでヒットをとばすことしか考えてないとしか思えないような発言をしたことが
あったような無かったような・・・ ただ、その記事というものを見つけられなかったので、
これは誤解だったのかもしれませんが、それでも、公式ホームページトップの内容や、
所属アーティストの数々などを見てみると、やはり、着うた歌手を量産して、
着うた発のヒットをとばすことばかりを考えてる会社なんだなという印象を持ってしまいました。




頼むから、これ以上無個性な着うたスイーツR&B歌手を大量生産するのはやめて下さい。お願いします。




もう3rd、4thアルバムの収録曲である「Sanctuary」「MY WAY」「Brightdown」のような、
デジタルサウンド主体ながらも重厚で、勢い満点の素晴らしい曲は聴けないのだろうか・・・





最後に、結論を言いますと、
この作品を聴くぐらいならGIRL NEXT DOORの2ndアルバムを聴きましょう。
そっちの方が、勢いのあるエレクトロ系の作品となってますから・・・