MOVE

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1. エガオノママデ 2. MASQUERADE 3. スキャンダラスな絆 4. 空の雫 5. サクラ散ってサクラ咲いて
6. 無冠の帝王 〜EMPEROR WITHOUT A CROWN〜 7. オトナやめたいわ
 8. A FAKE OF MYSELF

9. 人生ゲーム 10. STILL ALIVE
お気に入り度:91点






1998年にリリースされた、聖飢魔IIのアルバム。
日本のヘヴィメタルバンドとして、ご存知の通り長く活躍してきたバンドのアルバムですが、
この頃の作品については、一部ではポップ化してしまったと言われており、
さらに、前作アルバム「NEWS」ではそれでもまだメタル色の強い曲が半分ぐらいは収録されていたのに対して
この作品では、メタルと呼べる曲は無いといってもいいぐらいに、
どの曲もメロディアスでポップなロック作品となってしまいました。


しかしそれでも、このアルバムは曲の質自体は高い。聴きやすい曲が多いながらも、
それでもやはり彼らにしか作れないような個性を持った曲ばかりでなおかつ高レベルな曲ばかりです。
疾走感抜群で、なおかつシンセの音が絶妙に組み合わさったバンドサウンドがカッコいい「人生ゲーム」、
コミカルなブラスロックナンバーの「オトナやめたいわ」、
サビの爆発力が素晴らしい、過激なまでの恋を歌った「スキャンダラスな絆」などは特に印象的。
曲種も多彩ですし、また、それらのどの曲であっても、デーモン閣下のボーカルは抜群に生きている。
どんなタイプの曲であっても聖飢魔II流に染め上げることができるのは、やはりこのボーカルがあるからこそだなと思いました。


また、この作品の大きな特徴は、愛や夢や希望を歌った曲が多いということです。悪魔なのに。
1曲目のバラード曲「エガオノママデ」では、孤独の中で愛を求める人の姿を歌い上げ、
4曲目の「空の雫」では、サビで「永遠のドアを開いて 夢を探しに出かけよう」と歌い、
そして曲ラストの「もう 諦めるな」という叫びには、聴いていて本当に励まされる。
さらに5曲目「サクラ散ってサクラ咲いて」では、
美しくも切ないメロディが、まさに桜が散り行くような切なさと、桜が咲くその輝きを
同時に1つの曲の中で思い起こさせてくれるかのような、とても綺麗な曲で、
これらどの曲も、悪魔が歌う曲とは到底思えないような名曲揃いとなっています。
もはや4、5、10曲目などに至っては、まるで天使のような曲だといってもいいぐらいです。
なのでこのアルバム作品は、ある意味とんでもない問題作ともいえるでしょう。
悪魔じゃなかったのか!? お前も蝋人形にしてやるんじゃなかったのか!?


しかし、この音楽性の振り幅の広さ、特にメタルバンドとしては異常なまでの多彩さを持っていたというのも
彼らの大きな魅力の1つであり、他のバンドにはマネできないものだったと思います。
この後にリリースされた、最後のオリジナルアルバム「LIVING LEGEND」では、
今作ではやりたくでもできなかったことを全てぶち込んだかのように、ダークでブラックな路線が復活し、
なおかつカッコ良さも存分に発揮した、大傑作アルバムとなったので
その次作アルバムと今作アルバムを聴き比べてみるのも面白いかもしれません。