今日は久しぶりにアルバムレビューを、それも、私的名作アルバムであり、
同時に迷作(?)でもある、こんな作品をレビューしたいと思います。






1. 神 話(Remix version)
2. ヘリコバクター・ピロリ 
3. 短い恋
 
4. 屋上 
5. こまっちゃう 
6. 君が壊れた
7. 人間はなぜ 
8. Hey! Hey! トーキョー(Remix version)  
9. やすい女 
10. アケビ 〜丘の上の天使〜

お気に入り度:★★★★★★★★★ (9/10)





1995年にリリースされた、爆風スランプのアルバム。
まずこのアルバムは、1曲目にいきなり「神話」という超名曲が収録されています。
まるで、人類の太古から今までの歴史を思い出させてくれるかのような、壮大な世界観にのせて
人が人を愛するということの美しさを歌い上げる。 
歌詞もサウンドも全てにおいて、スケール感がすごいです。
これだけの感動作品を1曲目から作りあげて、果たして今作はどれだけの大傑作になるのかと思いきや・・・


なんと、そんな1曲目の感動もへったくれも全て無かったかのように、
次の2曲目で「♪胃ガンのもと それはヘリコバクター・ピロリとか歌い出してしまいます!
なぜこの流れでこの曲を入れる!? しかもこの曲がなぜよりにもよってアルバムタイトル曲になってしまってる!?
と最初は思ってしまいましたが、この理不尽さもまた彼らの魅力でしょう。
まず、おそらく全世界探してもピロリ菌をテーマにした曲なんて無いのではと思うし、
こんな曲を作ってしまうセンスは、やはり飛びぬけているなと思いました。


そして3曲目ではうってかわって、あっという間に終わった恋を歌う、
切な系ロック。これは名曲です。
さらに4曲目では、しっとりと落ち着いた曲調にのせて、
10代の頃のピュアな片思いを、ところどころユーモアを交えた歌詞にのせて歌いあげています。
という感じで、再びこのアルバムはいい雰囲気になってきたなと思いきや・・・


なんと、そんないい雰囲気など全てブチ壊すかのように、
次の5曲目で「♪あれから2ヶ月生理が無いのよ こまっちゃう」という歌い出しで始まる、
女子高生の売春をテーマにした曲を歌い出してしまいます!
まさにアルバムの流れなんて、そして空気を読むなんて知ったこっちゃないって感じです!
しかし、このアルバムがリリースされた頃は、女子高生の「援助交際」が
ちょうど社会問題になり始めた時期。彼らの作品には毎回のように
社会風刺的な曲が収録されていて、今作ではまさにこの曲がそう。
よってこの曲は、そういう女子高生をなくそうと世の中に訴えかけている(?)曲なんだなと・・・
一見ふざけてるようにしか聴こえない曲ですが、きっと本当の意味はそこにあるのだと思いました。


そしてその後は、7曲目では下ネタ全開で叫びまくってたり、
8曲目は、ちょっぴり切ない雰囲気のバンドサウンドにのせて、デリヘルがテーマの歌を歌ったり、
9曲目では、サビのバンドサウンドの疾走感に加え、それに絡むキーボードの音が
シリアスさも同時に感じさせ、これだけの素晴らしいサウンドを作っておきながら、
曲のテーマが「やすい女」だったりと、もはや、めちゃくちゃしたれ的な内容。
いろんな意味で爆発してしまっています。


そして、ラストを締めるのは、なんとピアノバラード曲。
自然がたっぷりと残った、郊外の住宅地の風景を描いた曲で、その風景描写がとても美しい。
しみじみと、良い曲だなと思います。こんなにも美しい曲が作れるなんて、
ついさっきまであんな曲の数々を歌ってたバンドとは思えないぐらいです!
でもこれこそが、彼らならではの魅力でしょう。


このように、1曲1曲は良い曲ばかりで、独自のセンスが爆発している曲ばかりですが、
アルバム全体から何かしらのコンセプトのようなものは、全く感じられませんでした。
しかし彼らのアルバム作品は、統一感のある作品よりもむしろ無い作品の方が良く感じるという・・・
この次にリリースされたアルバムは、ハードロックで統一された雰囲気の作品になるのですが、
その作品は個人的には微妙かなとすら思ってしまいましたので・・・
本当つくづく、誰にもマネできない何ともいえない魅力のあるバンドだったと思います。もうこんなバンドは出てこないでしょうね。


ちなみに、私がこの作品を初めて聴いたのは10代の頃で、これを聴くきっかけとなったのは、
この作品が地元の図書館で無料で貸し出されていたことがきっかけです。
こんな素晴らしい作品を、そしてこんな売春だとかデリヘルだとか歌ってる作品を、
公営の図書館で貸し出してくれるとは、なんて太っ腹だったんだ・・・