以前このブログで、今年に入ってから旧作アルバムを聴きまくったという話をしましたが、
今日は、そのアルバムの中から、1枚レビューを書きたいと思います。
数々の作品の中から、代表してレビューを書くにふさわしい、そんな作品です。
それでは、いってみましょう!







LIVING LEGEND

LIVING LEGEND

1. HEAVY METAL IS DEAD 2. SILENCE OR VIOLENCE? 3. GLORIA GLORIA 4. 戦慄のドナドナ
5. 20世紀狂詩曲(大教典編) 6. THIS WORLD IS HELL 7. LOVE≒defence of your complex 8. 死の協奏曲
9. FROM HERE TO ETERNITY 10. CENTURY OF THE RAISING ARMS 11. ROCK’N RENAISSANCE

12. REVOLUTION HAS COME
 13. GO AHEAD!
お気に入り度:100点!!










1999年にリリースされた、聖飢魔IIのラストアルバム。
ラストにして、そして20世紀末にして、大傑作アルバムが誕生しました。
おそらく、90年代の邦楽作品で、これを超える作品はもはやどこを探しても無いのではないでしょうか・・・
そう思えてくるぐらいの、そんな作品です。


まずこのアルバムの、特に前半部分で感じたのは、
前作、前々作では比較的鳴りを潜めていた、ダークでブラックな路線の復活と、ヘヴィネス全開なサウンド
1曲目から、現代における言葉狩り批判ともいえる歌詞、そして迫力満点の演奏とデーモン閣下のシャウト、
これらが一つになった、すさまじいとしか言いようがない作品「HEAVY METAL IS DEAD」。
この1曲目の時点で、とてつもない名盤アルバムが生まれたことを確信させるような内容でした。


そしてこのアルバムでは前半を中心に、社会風刺的な曲が多いのも特徴で、
人類の進歩しない姿、愚かな姿の数々を、ヘヴィなサウンドにのせてラップで歌う「20世紀狂詩曲」や、
そんな人間たちの姿を「人間モドキ」と歌う、ストリングスを取り入れたバラード「THIS WORLD IS HELL」
などといった曲にも、そういう姿勢が感じられます。
さらに、7曲目の「LOVE≒defence of your complex」では、
様々な形の「愛」を賛美しつつも、その半面どこか皮肉るような歌詞が、実にお見事。
「愛しているぜベイベー」「この響きに弱いだろオマエら」
これは素晴らしい! 同時にこれは、ありきたりなラブソングばかりが売れてしまう今の世の中を
皮肉っているようにも思えて、本当に見事だと思いました。
これらの曲は、まさに悪魔だ、悪魔だからこそこんな曲が作れてしまうんだと・・・
そう思わせてくれるような曲の数々です。


さらに極めつけは、殺人や自殺がはびこる世の中を嘆くような歌詞が印象的なバラード曲「GLORIA GLORIA」、
人類とウイルスとの戦いを描いた「戦慄のドナドナ」、
この2曲に至ってはもう、つくづくさすが悪魔だとしか言いようがない・・・
しかもそれでいて、どちらも曲の展開がドラマチックで、メロディも良い、
さらには「戦慄のドナドナ」では「ドナドナ」と「ドナー」(臓器提供者)をかけた歌詞もうまいから、
もともと病気モノの作品が大の苦手である私でも聴けてしまう、それどころかハマってしまう。
これはもう、音楽の持つ力のすごさを感じずにはいられない曲ですね。


しかし、そんな曲たちが入っているその一方で、2曲目や、後半の9〜12曲目といった曲は、
このバンドのもう一つの魅力であり、前々作などの良い部分を引き継いだともいえる、
キャッチーで、疾走感抜群で、とにかくカッコいいという一言に尽きる曲の数々。
メタルサウンドにストリングスが絶妙に絡む「CENTURY OF THE RAISING ARMS」、
ゴシック調のイントロから始まる、全英語詞の洋楽ハードロック風ナンバー「ROCK’N RENAISSANCE」
などは特にカッコいい曲です。
そして、12曲目の「REVOLUTION HAS COME」では、ダークさと、カッコ良さ、
この両方を合わせ持ったといえる、まさに聖飢魔IIの総決算ともいえるような曲で、
スト2曲にして素晴らしいとしか言いようがない、名曲が誕生したなと・・・


そして何よりこのアルバムは、曲の構成や展開も多種多様で、
それでいて、ダークな曲からキャッチーな曲までどの曲においても、メロディが良いです。
だから、どんな内容をテーマにした曲であってもすんなり聴けるし、
13曲も入っていて、それでいて捨て曲が1曲も無い。
つくづく、公約とはいえ、こんな素晴らしい作品を世に出したバンドが1999年限りで解散してしまったのは惜しいです。
ラストだからここまでの名盤を作れたという考え方もありますが、
やっぱり最近の音楽シーンを見てみると、メタルを軸にしつつも、こんなにも多様性にあふれ、
それでいて素晴らしい作品の数々を作れるバンドは、これからもう出てきそうにはないように思うから・・・
今のデーモン閣下は、相撲解説者としての仕事や、ガールズロックのカバー作品ばかりをやっている印象で、
もちろんそれはそれで決して悪くはないんですが、でもやっばり、
なんかそればかりが目立ってしまってるような現状は、惜しいと思わずにはいられないですね。